御在所岳クライミングルート開拓の歴史紹介

■1940年代~
1ルート、2ルート、3ルートや中尾根は、かなり昔から中部地方のクライマー達の練習場として登られていた。

■1960年代~
ヨーロッパ・アルプスのクライミングに影響され、あるいは実際に体験したクライマー達によって新しい動きがあった。一ノ壁正面のルート、4ルートはその当時に登られたものであった。また、同時期にリングボルトが出現し、それによりそれまで手をつけられていなかった中尾根バットレスや前尾根P5フランケの登攀を可能とした。

■1973年
・夏 中尾根バットレスの大チムニー・ルート登攀(後藤晴夫・尾崎隆)
ゲレンデという意識を変える先駆けとなる登攀であった。

■1974年
・森正弘が藤内で新たなる展開を開始した。
森氏は、ヨセミテで5.9を体験した後にホーム・グラウンドである藤内に戻ってきたのであった。

■1975年
・うさぎの耳のウェイク・アップがトップロープで開拓された。(森正弘)
藤内初の5.9のルートであり、あらゆる意味での事始めであった。その意味でウェイク・アップ(目覚めよ!)と名付けられた。(岩と雪#91に掲載)

■1976年
・うさぎの耳のウェイク・アップがリードされた。(森正弘)

■1978年
・6月 アウト・オブ・サイト(前尾根P7)がトップロープで登られた。「すばらしい」という意味で、見晴らしが悪いこととの掛け言葉である。(中山芳郎)
・中尾根バットレスのカリフォルニア・ドリーミングの開拓が始まる。(森正弘・小森義夫・中山芳郎)

■1979年  
・8月 シミュレーション(前尾根P7)が、フラッシングで開拓された。カリフォルニア・ドリーミングを意識した、シミュレーション・プラクティスの意味があった。(森正弘)
・フライング(P6)がトップロープで登られた。(森正弘)

■1980年
・8月 中尾根バットレスのカリフォルニア・ドリーミングが3ピッチ目まで完成。(森正弘・小森義夫・中山芳郎)
・9月 カット・イン・コーナー(ウサギの耳)が登られた。「近道」という意味。トップロープで登られ、後にリードされたルートである。(森正弘・三品弘樹)
・10月 ハング・オーバー(ウサギの耳)がトップロープで開拓された。「二日酔い」という意味で、核心部のハング越えで不安定な動きを強いられることからの命名。(森正弘)
・宇宙遊泳(一ノ壁)がトップロープで登られた。(森正弘)
・狭き門(中尾根P4)がトップロープで登られ、後にリードされた。レイバックでハングを越え、スクイーズチムニーに入ることから命名された。(中山芳郎・森正弘)

■1981年
・5月 BMC(英国山岳評議会)と日本山岳協会の交換訪問で6人の英国人クライマーが藤内に訪れた。中尾根バットレス2ピッチ目にキャセイ・パシフィックが、カリフォルニア・ドリーミングのバリエーションルートとして引かれた。(ポール・ドースン)
・5月 シミュレーションの前田バリエーション(にこにこトラバースと命名・前尾根P7)が拓かれた。(前田徹)
・9月 中尾根バットレスのカリフォルニア・ドリーミングの最終ピッチ(7ピッチ目)が解決された。(森正弘・南場享祐)
・へびの皮(前尾根P7)がフラッシングで開拓された。開拓時にヘビの脱皮がクラック内にあったことからの命名である。(北村憲彦)

■1982年
・3月 モンキー・バック(中尾根)が、トップロープによる試登なしで開拓された。(三品弘樹)
・6月 中尾根バットレスのカリフォルニア・ドリーミングの2ピッチ目のバリエーションルートとして、ウィンド・サーファーが登られた。(北村憲彦)
・8月 サスペンション(前尾根P2)がリードされた。(森正弘)
・中尾根にマッド・モイストが開拓された。(森正弘)
・前尾根にスライド・オーバーが開拓された。(森正弘)

■1985年
岩と雪 1985年12月 #113 P99 Chronicle スカイセーリング(5.11a~b)

■1986年
岩と雪 1986年12月 #119 P110 Chronicle タッチ・アンド・ゴー(5.12a)

■1987年
岩と雪 1987年4月 #121 P97 Chronicle セプテンバー・レイン(5.10a)、オーバー・ザ・レインボー(5.11a)、サマー・バケーション(5.10c)、アメリカン・フィーリング(5.10b)、キー・ホール(5.11a)

■1990年
岩と雪 1990年8月 #141 P56 Chronicle サイドホール(5.12a)、ブーメラン(5.11a)、テンクォーター(5.10a)

■1992年
岩と雪 1992年8月 #153 P57 Chronicle パズル(5.11d)

■1995年
岩と雪 1995年4月 #169 P68 Chronicle ナムサハスミダ(5.11a)

■2016年
・9月 前尾根P5フランケにカラスの涙(3ピッチ 5.10d)と2ピッチ目からの派生ルートのマジカルミステリーツアー(5.11d)が開拓された。(カラスの涙はROCK&SNOW#076に掲載)

■2017年
・9月 前尾根P5フランケに裸のランチ(3ピッチ 5.10b)が開拓された。

■2018年
・8月 藤内沢2ルンゼ奥又にエアリアル(2ピッチ 5.10d、5.10c)が開拓された。